インタビュー記事
Vol.2
特別取材
2022年03月15日
心と体にいいコーヒーを、八ヶ岳から。コーヒースタンド「Gardenia Coffee Stand & Roastary」原西 謙嘉さん
長野県諏訪郡富士見町富士見。ほとんど信号機もない、この町にCOFFEEとだけ書かれたシンプルなお店がある。このお店は、コーヒー豆の焙煎と販売のみというこだわりぬかれたスタイル。「本当に美味しく、心と体にいいコーヒーを、多くの人に届けたい」という強い思いが詰まったコーヒースタンド「Gardenia Coffee Stand & Roastary」のオーナーが、原西謙嘉(はらにし・よしひろ)さんである。
【コーヒーの概念と人生を変えた、一杯のコーヒーとの出会い】
今でこそすっかり八ヶ岳の人間と笑いながら話してくださった原西さんだが、元々の生まれは東京都墨田区。コーヒーの世界に飛び込む前、子ども達が遊ぶ木製遊具などをプランニングする仕事をされていた。子どもは好き、やりがいもなかったわけではない。しかし、当時から、「これじゃない」と思っていたという。原西さんは「都会の中で満員電車に揺られて暮らすというのが、どうも肌に合わなかった」と語る。
しかし、ある時仕事に疲れて立ち寄ったコーヒー店で人生が劇的に変わった。元々コーヒーは飲まなかった原西さん。苦味で胃が痛くなってしまうことさえあったそうだ。にもかかわらず、不思議な縁に誘われ、立ち寄ったコーヒー店で飲んだ一杯に衝撃を受けた。「コーヒーは苦い物」という概念が、一瞬にして塗り替えられた。一杯のコーヒーを飲んだその日から、原西さんのコーヒーに没頭する日々が始まったのである。まさに人生を変えた一杯だったのだ。
それから、様々なメーカーがやっているセミナーに参加したり、通信で取れるような基礎的な資格の取得にも取り組み、自身で焙煎も行うようになった。
【移住、そして念願の出店】
2011年の東北大震災をきっかけに、元々東京を離れたいと思っていた原西さんは、今から6年前の2015年に八ヶ岳へと移住した。親戚が別荘を所有しており、自身も幼少期の頃から夏になると遊びにきていたという縁があったことから、元々なじみ深い場所ではあったのだそう。
八ヶ岳に来てすぐは植物関係の仕事に就職し、休みの日に経験を積んでいた。独立したいという野心が強くなったのは、朝市にでたり、イベントをして、お客様の声を直接聞いてからという。朝市で自分が焙煎したコーヒーをお客様に直接お届けしたとき、「すごく美味しい」「香りがいい」といった声を直接いただいた。それが本当に嬉しく、この八ヶ岳でコーヒーショップをやりたいという気持ちが強くなっていったそうだ。
そして、2019年。植物関係の仕事をしていたご縁で紹介してもらった場所に、念願のコーヒーショップを出店した。
【「コーヒースタンド」として伝えたい思い】
原西さんがオープンしたお店の運営スタイルは、シンプルで洗練されている。扱っているのはスペシャルティーコーヒーと呼ばれ、世界の生産に占める割合3、4%と言われるほど希少性が高い豆のみ。それをハンドドリップで飲んでいただく。
他にも卸と、ネット販売も行っているが、あくまでも地域や観光で来るお客様が気軽に立ち寄れるテイクアウト専門のロースタリーというスタイルだ。さながらガソリンスタンドならぬコーヒースタンドである。原西さんはコーヒーを飲んで心身ともに癒され、「コーヒーってこんな効能があるのか」と感じた原体験と「心にも体にもいいコーヒー」を、このお店から地域の人々に届け続ける。
【コーヒーは人生の救世主。だからこそ、やりたいこと】
原西さんのこれまでも、そしてこれからもコーヒーと共にある。原西さんはコーヒーを「自分の人生を変えてくれた救世主」と語る。それほどの愛があるからこそ、たくさんの展望を語られていた。
いずれは自分の足で産地にいき、店独自の味をセレクトし、販売したいとのこと。それだけではない。今はまだネックはあるものの、いずれ「八ヶ岳ブランドの豆を生産したい」という。コーヒーの花がなり、実が一杯なった様を見つめながら、自然に囲まれて飲むコーヒー。こんな贅沢があるだろうか。もし実現すれば、新たな八ヶ岳の魅力となるはずだ。それも全て根本は「美味しいコーヒーをいろんな人に飲んでもらいたい」というコーヒー文化の啓蒙に尽きる。原西さんは12年前に味わった忘れられない感動を、八ヶ岳から伝え続けていく。
投稿日時:2022年03月15日 / 最終更新日時:2022年03月18日